これからの時代に対応する企業内教育システムの構築
人材育成特別委員会委員長 鎌居 五朗(日東電工会長)
新時代の企業内教育専門委員会委員長 島 洋一(鐘淵化学工業取締役)
要約
委員会での検討経緯
産業構造や就業構造の変化、さらには個人の就労意識の多様化が進むにつれ、従来型の一律的・画一的な企業内教育システムでは十分に対応できなくなってきており、新たなパラダイムに立脚した企業内教育システムの確立が求められている。
そこで本会では、企業が求める人材を3タイプに分類し、それぞれの役割や立場を明確にした上で、各人が保有する能力、個性、適性に着目し、これらをベースにした企業内教育システムのあり方について、「新時代の企業内教育専門委員会」において検討することとした。
概要
1.企業内外の環境変化 〜「安定」から「変化」への激流〜
(1)経営環境の変化
IT革命、グローバル化の進展、少子・高齢化の進行により、企業経営は、「ハード中心」「重厚長大」「規格大量生産」から、「ソフト中心」「軽薄短小」「多品種少量生産」へ移行している。
(2)人事システムの変化
長期雇用、年功賃金など従来型の一律的・画一的な人事慣行に行き詰まりが生じ、成果・実績主義の人事システムへとシフトしている。
(3)個人の意識の変化
若年層を中心に、自分の能力や適性を活かせる仕事を求めて、転職を希望する者が増加している。
2.今後求められる人材像
企業内外の環境変化に伴って、今日企業が求める人材も大きく変化している。本報告書では、求める人材を役割期待別に3タイプに分類し、それぞれの個性や能力を明らかにした。
(1)課題形成型人材
企業の成長発展の糧を創造し、かつ経営を牽引していく人材である。人間的魅力に富み、リーダーシップを遺憾なく発揮し、企業経営に対して確固とした信念を持ち行動することが要請される。
(2)課題解決型人材
社内外で通用する高度な専門性や知識、能力を発揮し、主体性をもって担当業務や課題を遂行し、確実に利益や付加価値を生み出す人材である。
(3)課題遂行型人材
与えられた課題の意味や目的、目標を確実に理解した上で、手順や一定のルールに沿って確実に処理し、常に創意工夫や改善を重ねながら効率的に実行していく人材である。
3.従来型企業内教育システムの特徴と限界
今日の経営環境のもとで、横並び・画一的で強制・受身型といった従来の企業内教育システムは行き詰まりを生じている。これまで以上に変化が激しく、厳しい時代に対応するには、新たなパラダイムによる教育システムを構築する必要がある。
4.今後求められる企業内教育システム
従業員一人ひとりが保有している能力・個性・適性をベースにした教育システム、さらには全従業員を対象として、「キャリアに視点を置いた教育」「ビジネスリテラシーの向上のための教育」「経営理念・哲学教育」を軸とする教育システムについて議論した。
(1)各従業員のキャリアに視点を置いた教育
E.H.シャインが提唱する「キャリア・アンカー」の概念を用いて、各従業員のキャリア形成を支援するための教育の実施とともに、複線型人事制度や社内人材公募制など適性に応じた配置・異動を可能にする「開かれた人事システム」の構築が必要である。
(2)ビジネスリテラシーの向上のための教育システム
ビジネスリテラシーとは「論理的思考力」「情報収集・活用能力」などのビジネスを実践する上で基礎となる能力のことである。
従業員一人ひとりが主体的に能力開発の意欲を醸成し実践する企業風土づくり、さらには各人の能力レベルを正確に把握し、能力開発を支援するシステムの構築が求められている。
(3)3タイプの人材別教育システム
1.課題形成型人材に対する教育
早期選抜による社内外のビジネススクールでのリーダー育成教育、複数部門や関連会社における業務体験など、長期的視野に基づいて計画的に育成していく仕組みづくりが要請される。
2.課題解決型人材に対する教育
担当部門において必要とされる知識や技能の向上教育が求められる。各人が育成の機会を自主的に選べる「選択型研修制度」が効果的である。同制度構築のためには社内研修プログラムを拡充するとともに、外部教育機関、異業種交流会への派遣など多様な選択肢を提供することが望ましい。
3.課題遂行型人材に対する教育
「担当業務の位置づけ・目標」の理解とその実践を徹底した上で、現場での計画的なOJTや担当業務スキルの底上げ教育を実施する。
以上



