業績連動型賞与制の導入と課題

人材育成特別委員会委員長 鎌居 五朗(日東電工会長)
業績賞与制度専門委員会委員長 原田 光雄(ナショナル住宅産業取締役)

要約

委員会での検討経緯

1990年代初頭のバブル経済の崩壊以降、多くの企業で事業の再構築が進められ、人事制度の分野においても報酬制度を中心に改革が行われている。この中でも企業業績をより反映した賞与制度の導入企業は90年代後半から急速に増加している。この様に賞与制度の見直しは人事制度改革の重要課題として位置づけられ、各社で取り組まれている。

そこで本会では、「業績賞与制度専門委員会」を設置し、企業業績に賞与原資を連動させる業績連動型賞与制導入のポイントと今後の取り組み課題を明らかにすることとした。

概要

まず、日本における賞与の性格と賞与の原資決定の方法について整理した上で、業績連動型賞与制導入の背景について検討した。

1.業績連動型賞与制導入の必要性

(1)生産性と報酬の整合性の確保

同じ業界内での「相場」による報酬の設定が困難になってきたことや、コスト面で国際競争力を維持していくことが困難になりつつあることから、生産性と報酬の整合性を確保する必要性が出てきた。

(2)経営戦略、事業戦略達成のためのインセンティブの強化

経営戦略、事業戦略達成のために、従業員の業績に対する思いを喚起し、活性化した状態をつくりだすための有効な人事施策として導入されている。

2.業績連動型賞与制運用上のメリット

(1)一層の業績反映と透明性・納得性の確保

労使間で賞与原資決定のための業績指標と算定式を明らかにすることにより、決定プロセスとその根拠が明確になり、従業員の納得性を確保することができる。

(2)事業への参画意識の高揚

具体的な業績指標は従業員に会社として何を求めているのかを示すメッセージとなる。これを明確にすることにより、管理職をはじめ、一般従業員の経営参画意識を高揚させることができる。

(3)労使交渉の省力化

賞与原資算出のための基本的考え方について労使双方の認識が一致しているため、労使交渉において賞与原資の交渉に費やす時間が少なくなり、他の課題についての話し合いに時間を多く割くことができるようになる。

3.業績連動型賞与制導入のポイント

(1)構成

業績連動型賞与制は基本的には「固定部分」と「業績反映部分」とで構成している企業が多い。成果の配分という賞与の性格からすると、賞与額の変動は当然のことであるが、賞与には生活給的な側面も現実には残っているので、当面は一定割合(この割合は企業および導入階層等により異なる)を「固定部分」として確保することも考慮することが必要となろう。

(2)原資算定のための業績指標

原資算定のために用いる業績指標としては「売上高」「営業利益」「経常利益」など多様であるが、どの指標を用いるにせよ、(1)会社の実力を十分に反映している指標であること、(2)従業員の働きぶりを反映している指標であること、の2つの考え方を基にして決定することが重要である。

(3)賞与原資の算定期間

賞与原資の算定期間については、半期単位と一年単位の二通りが考えられる。半期単位の場合は、直近の企業業績をタイムリーに賞与原資に反映することができる。年間単位の場合は、企業決算が年間単位で行われるため、企業決算に直接リンクした形で賞与原資を決定できる。

(4)部門業績の賞与原資への反映

各部門への従業員の配置は、従業員個々人の希望よりも企業の経営戦略、事業戦略に沿って行われているため、部門業績を賞与原資に反映させる場合には、従業員個々人の配置についての意向が少しでも反映されるような制度も併せて検討することが必要となろう。

4.今後の取り組み課題

(1)業績反映部分の拡大と企業グループ業績の反映

今後は従業員の納得を得ながら業績反映部分をいかに拡大していくか、その工夫が必要となる。連結決算が実施されると、その結果をどの程度反映させていくのか検討が必要となる。

(2)総額人件費という視点

限られた原資を福利厚生や企業年金、そして賃金や賞与等の各分野にどのようなウエイトで配分していくのかについて労使間で十分に検討することが求められる。

(3)人事処遇諸制度の整備と賞与制度の位置づけの明確化

賞与原資を企業業績に連動させるとともに、その原資を従業員個々人の業績(成果)に応じ配分することが重要となる。その場合、人事考課制度の役割が重要であり、個々人の貢献度を反映できるような仕組みに改革していくことが今後の課題となる。併せて報酬体系全体のあり方や、職場組織や役職制度など、成果を管理するための仕組みづくりの見直しも必要となる。

(4)情報公開のための工夫と従業員教育の必要性

業績連動型賞与制の実施のためには、経営情報の開示が前提となる。本制度は従業員の企業業績に対する理解が要となることから、そのための従業員教育が必要である。また、従業員に企業業績に関心が向くような仕掛けづくりも重要である。

以上

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