ビジネスリーダーの早期選抜育成
〜日本型ファースト・トラック・プログラム構築の課題〜
人材育成特別委員会委員長 鎌居 五朗(日東電工相談役)
人材育成と評価制度専門委員会委員長 大川畑 勝也(江崎グリコ常務取締役)
要約
委員会での検討経緯
企業環境が急速に変化し、国際競争が一段と激化する中で、日本企業の最重要課題の一つは、ビジョンを構築し、的確かつ俊敏な意思決定ができる強力なビジネスリーダー(以下リーダーと略す)の育成である。
そこで本会では「人材育成と評価制度専門委員会」を設置し、ホワイトカラーのキャリア形成の方向ついて、特に次世代の経営を担うリーダーの早期選抜育成に焦点を当て検討することとした。
概要
1.アメリカ、日本の昇進、異動
(1)アメリカの昇進、異動
アメリカの昇進、異動の特徴として、1.早い昇進(入社後3〜5年の短期選抜)、2.ファースト・トラック・プログラム(選抜者が特別のキャリア・プログラムに組み入れられ、早く昇進していくこと)が挙げられる。
(2)日本の昇進、異動
日本の昇進、異動の特徴は、1.学歴別年功的昇進管理(学歴別昇進コースを設定し年功に重きを置き昇進を決定)、2.ゆっくりとした昇進(同一年次の従業員間は、入社後10〜15年間は処遇上格差をつけない)、3.特定部門内での異動が主流であることが挙げられる。
2.新たなキャリア形成の方向
(1)取り組みの方向
今後は、変化のスピードに対応できるリーダーを育成するために、現在よりも昇進選抜時期の早期化および幅広い異動を行う必要があろう。ただその場合、下記の視点が不可欠である。
変化に対応した新たな人事制度を構築する
価値観の多様化に対応し、企業による選抜と個人の自立性を尊重しキャリア選択が可能な複線型人事制度の構築に取り組む必要がある。そのためには、従業員のキャリアデザインを支援する仕組みを構築するとともに、従来以上に自己責任という考え方を浸透させていかなければならない。
日本企業の良い点は継承する
日本企業の競争力を支えてきた一つの要因である、チームワーク=「和」については、今後も残していくことが必要である。
(2)具体例〜日本型ファースト・トラック・プログラムの構築〜
- 1)日本型FTP導入に際する基本的考え方
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FTP導入による企業風土の改革
選抜された者とされなかった者との違いは、あくまで「役割期待」の違いとして位置づけることが必要である。FTPを効果的に運用するためには、個々人の業績や実績を重視する人事制度や賃金制度に改定することも不可欠である。FTPの導入と一連の取り組みにより組織全体が活性化し、ひいては企業風土の改革につながる。 -
全従業員の能力向上教育
従業員一人ひとりの適性に応じた、能力・技能を高めるための底上げ教育が求められる。組織は様々な能力を持ち合わせた人材がダイナミックにぶつかり合ってはじめて、パワーを発揮する。 - 2)FTP構築、運用の留意点
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選抜基準
自社が求める経営トップ層を明確に描いた上で、高い業績・成果を発揮し、かつ企業の価値観に共感できる人物であることが選抜基準となる。 -
選抜の時期
入社後一定期間に多様でより高度な仕事にチャレンジする機会を与え、能力開発の場を提供しつつ、将来を担う経営幹部としての適性や潜在能力を見据えた上で選抜を行う。 -
育成プログラム構築の留意点
企業のコア部門や関連会社でのマネジメントの経験などローテーションによる一連のOJTと、経営トップを講師とした研修や国内外のビジネススクールへの短期留学などのOff—JTとの計画的かつ効果的な組み合わせがポイントとなる。 -
担当部門
経営トップと、人事教育部門あるいはリーダーの養成を担当する部門の強力な連携により、計画的に推進することが求められる。 -
FTPから脱落した者への対応
専門職コースなど他のプログラム(コース)を選択出来る仕組み、さらにはキャリア開発プログラムやエンプロイヤビリティ開発プログラムの実施などの支援策を企業が責任を持って用意しておくことが求められる。また再度挑戦できるチャンスを用意しておくことも必要である。
以上



