「ダイバーシティ専門委員会」 報告書
〜ダイバーシティによる企業競争力の強化が“必要”から“必然”に〜
雇用対策特別委員会委員長 辻井 昭雄(近畿日本鉄道会長)
労働政策特別委員会委員長 岡山 紀男(住友電気工業会長)
ダイバーシティ専門委員会 委員長 福島 伸一(松下電器産業取締役)
要約
第1章 はじめに
近年、人事労務管理においてダイバーシティ【Diversity】という考え方の導入が唱えられている。このダイバーシティとは、従来の社会や企業内におけるスタンダードにとらわれず、多様な属性や価値観・発想をとり入れることで、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長につなげようとする考え方であり、今後、わが国では好むと好まざるとに関係なく、必然的にダイバーシティが求められていくと思われる。
しかしながら、ダイバーシティという考え方はこれまでのわが国にはない新しい概念であるため、どのような視点に基づきそうした考え方をとり入れるべきか、さらにはその推進のための課題にはどのようなものがあるかについては、理解にバラツキが生じている部分も少なからずあると思われる。
そこで本会は、「ダイバーシティ専門委員会」を設置し、ダイバーシティのあり方と推進した場合の効果・影響、およびその推進の方策について研究し、ダイバーシティの推進による企業競争力の強化を経営者に訴えることとした。
第2章 ダイバーシティの必然性
現在、ダイバーシティが企業経営に求められる根拠として、1.少子高齢社会の進展、2.経済のグローバル化の進展、3.お客様(消費者)ニーズの多様化、4.人材育成・活用の変化、5.価値観の多様化と雇用・就労形態の多様化——が挙げられる。要するに、経済社会が多様化するなかにおいて、ダイバーシティは“必要”というよりも“必然”的な流れである。
第3章 ダイバーシティに対する企業意識と取組み事例
ダイバーシティに対する企業の意識は、『多様な働き方に関する企業の意識調査』(関西経営者協会、平成16年4月)によると、全体的にダイバーシティに対して前向きに考えている企業が多く、とりわけ1,000人以上の大企業においてダイバーシティに価値を見出していると考えられる。
第4章 ダイバーシティのメリットとその成否を握るもの
ダイバーシティのメリットとして、1.モノカルチャー(単一の文化)よりも多様な属性・働き方の組み合わせであるダイバーシティの方がより良い商品・サービスを創出できる可能性が高いこと、2.経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応した異質・異能な人材の確保と総額人件費管理が容易になること、3.従業員のモラールアップに結びつくこと、4.企業イメージの向上に結びつくこと——という大きく四つ挙げられる。
もちろん上記四点以外にもダイバーシティのメリットはあると考える。ダイバーシティとはあくまで手段であって、本質的な目的は年齢や性別、国籍、人種などの差異を求めることだけではなく、ダイバーシティという考え方を通じて企業にとっては競争力、収益性、成長性を高め、従業員にとっては個人のワークスタイル、ライフスタイルを実現しながら能力を最大限に発揮することである。そのためにはダイバーシティという考え方を認め合う組織風土、企業文化をいかに構築できるかにその成否が掛かっている。
また、ダイバーシティとは多様な人材を寄せ集めれば良いということではない。多様化が進むことにより、これまで社内で常識と考えられていたことが通じなくなる可能性もある。そこで、企業の社会的責任や役割、および職場・個人のミッションを自覚し、共有し、共感し合うことによって組織として機能させる必要がある。このように、ダイバーシティを進めるに当たっては異質な価値観、特性をとり入れることにより多様化を進める一方で、常にその根底において同じものを持ち合わせておく必要がある。そのためには、経営者をはじめとする管理者のさらなる意識の変革やリーダーシップの発揮がこれまで以上に求められてくる。
第5章 おわりに
少子・高齢化やグローバル化の進展、マーケットの多様化などによる急激な環境変化への対応を図るためには、これまで異質と考えられてきた人材、あるいは多様な価値観を有する人材を積極的に活用し、企業競争力を高める必要がある。すなわち、ダイバーシティをとり入れることは、“必要”ではなく“必然”なのである。逆に言えば、ダイバーシティを考えない企業はこれまでにないリスクを抱えながら熾烈な競争を生き抜かねばならない可能性が高いのではなかろうか。
元来、関西経済はベンチャー企業や独自のビジネスモデルを育んできた土壌と資質があり、このダイバーシティという考え方も柔軟にとり入れ、活用できる資質があると考える。関西企業が先陣を切ってダイバーシティをとり入れ、リーディング・カンパニーの集積地域として共に取り組んでゆこうではないか。
以上



