『これからの労使関係』
「新たな労使関係研究会」
(アドバイザー:石田光男同志社大学教授、篠原健一大阪商業大学助教授)
第1章 はじめに
近年の人事制度改革や雇用形態の多様化等の環境変化により、集団的労使関係の比重が小さくなっているように見える。そこで本研究会では、今後どのような労使関係を構築すべきかについて検討する。
第2章 集団的労使関係の重要性
(1)集団的労使関係が果たしてきた役割
現在、環境変化に直面している集団的労使関係は、主に戦後に成立したものと指摘されている。当初はイデオロギーの影響もあって過激な労働運動も発生したが、各企業の労使協議等の取り組みや1960年の三井三池争議、オイルショック等の経験を経て、労使の信頼関係が構築されていった。そこでは労使の合意の積み重ねにより労使間のルールを設定することで、様々な問題の平和的な解決を図ってきた。
(2)労使を取り巻く現状と集団的労使関係の必要性
現在、成果・業績に基づく人事制度の導入等による賃金決定の個別化、パートタイマーや派遣労働者の増加など雇用形態の多様化が進んでいる。
一方で、厚生労働省発表によると個別労働紛争に関する相談件数が年々増加している。
これらの事象は改めて企業に集団的労使関係の重要性を再認識させている。厚生労働省の調査でも、労働組合の有無にかかわらず労使の意思疎通の必要性が指摘された。
第3章 集団的労使関係の基本的枠組み
本章では、集団的労使関係の中心的役割を担っている「労使協議制」について現状を整理することとする。
(1)集団的労使関係の参加的展開
本会の「労働協約実態調査」では労使協議制の付議事項を調査しているが、この中で経営事項である「経営方針・生産計画」が半数以上(六四・四%)の労使協議で付議事項となっている。このように経営事項にも労働者側は話し合いを通じて参加しており、そこには集団的労使関係の「参加的」展開があると言えよう。
(2)集団的労使関係の広域的展開
近年、各調査にもあるように企業では企業の分社化・グループ化の動きがみられる。
このような現状に対し、労使協議制が一企業の枠を超えグループ企業や持株会社を中心に実施されるなど、集団的労使関係が企業内に留まらず「広域的」に展開するという動きがみられる。このような現状に対し、労使協議制が一企業の枠を超えグループ企業や持株会社を中心に実施されるなど、集団的労使関係が企業内に留まらず「広域的」に展開するという動きがみられる。
第4章 マネジメントチャネルのコミュニケーション
前章では集団的労使関係における労使間のコミュニケーションについて、労使協議制を例に整理した。
ただ、それとは別に企業組織における仕事管理の仕組みとしてのマネジメントチャネルにおいては、例えば目標管理制度等により、業務の質・量、配分、進捗状況、またそれに対する評価等について従業員間(上司と部下)のコミュニケーションが確保されている。
第5章 これからの労使関係
(1)二軸のコミュニケーションの再構築
だが現在、企業を取り巻く環境変化は激しく、迅速な経営判断と全員一丸での実行が必要とされている。そのため、労使間の真剣な熟慮と話し合いにより、労使が問題意識・事業環境認識を共有することが求められている。
また、マネジメントチャネルについては、この仕組みの一方を担う上司(管理職)に十分な時間がなく、本来の仕事管理の仕組みが機能しなくなっている実態があると思われる。これに対しては職場の実態に応じた上司(管理職)の役割と権限の見直し等、コミュニケーションが円滑に行われるように改善する必要がある。
よってこれからも労使で情報共有してきた伝統を活かし、置かれた環境に対応しうるよう、二軸のコミュニケーションの仕組みを再点検・再構築することが必要となる。
(2)これからの二軸のコミュニケーション
現在、労使を取り巻く環境変化の中では、特に「多様化」への対応が課題と言える。これは働き方の多様化だけでなく、人事制度の個別化による処遇の多様化についての個別的な対応、及びそのためのコミュニケーションが要請されている。
そのためには各企業の労使で様々な将来のリスクを見据え、多様化を踏まえた働き方について労使のコミュニケーションの中で整理する必要がある。それを受け、マネジメントチャネルでは、労使間で決めたルールの適用や運用をめぐるコミュニケーションを行う。
二軸のコミュニケーションが新たな環境下でも有効に機能するよう再構築するにあたっては、人事労務部門の役割が再認識される必要がある。



